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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のsatoshiのレビュー・感想・評価

4.2
 浅野いにおの漫画を原作とした映画。前後章に分けて公開という強気の興行。いにお先生のことは高校生の頃に「おやすみプンプン」を読んで「キモい・・・」と思って以降、生暖かい目で見守ろうと思っています。「デデデデ」もこのタイミングで原作読みましたが、この漫画をどうアニメーションにするのか、それは気になるわけで鑑賞した次第です。

 連載漫画を映画にするにあたって、いちばん気になる点は、「どうまとめるか」です。本作は原作が12巻あるので、2部作とは言えそこは気になる点でした。しかしそこは流石は吉田玲子。原作の良さを損なうことなく構成を映画用に再構築していました。いちばんの変更は原作の後半に来る真相を見せてしまう点。そして原作既読の身からすると、この真相に向かって映画全体が構成されているのもよく分かるようになってる(キホと小比類巻の会話と、それを聞いていたときのおんたんのリアクション、ひろしの名言など)。しかもここで最後の大ネタを残して後章にいくという匙加減も絶妙だった。

 内容的には、非常に寓話的な話で、侵略者が来て、終末が近いと薄々感じつつも、人々は日常を過ごす。また、本作では侵略者に関連した出来事が起こるものの、それらはネット上で消費されて終わってしまう。陰謀論が蔓延し、政府は何か国民を欺いた計画を進めている。世界が終わっているのに、人々はそれでも何となく生きているという世界観は、現代の日本と重なる部分が多い。しかし、重要なのはこれを描いているのは浅野いにおであるという点で、彼の根底にあるのは「世の中なんてこんなもんなんだよ・・・」という諦観であり、冷笑的な中二マインドなんですよね。おんたんは侵略者に「人類はキモい」って言ってたけど、浅野いにおも絶対そう思っている。でなければあんな漫画は描けない。それ故に、「これは現実の日本を描いた寓話だ!」として持ち上げるのは好きじゃない。だって浅野いにおだよ?

 アニメーション的には凡作だと思うんだけど、浅野いにおが全面的に協力したということで実現した、彼の画がそのまま動いているのは衝撃だったし、労力かかってんなと感じた。ただ、浅野いにおの漫画にある絶妙な「キモさ」は軽減されてたけど。

 浅野いにおの漫画というのは、基本的に本作みたいな中二的冷笑マインドに満ちていると思っている。それは「世界の終わりと夜明け前」から変わっていない。しかし、彼の作品にはその中にあっても、人のささやかな喜びだったり希望が見える。今回の映画化でいちばん気になったのはラストのナレーション。原作では「8.32」以降の門出は出てこない。しかし、本作では彼女のナレーションが入っている。ということは、浅野いにおは映画のために原作とは違ったラストを考えているのではないか?原作とはまた違った希望なりを見せてくれることを期待して、俺は「ムジナ」を買って後章を待ちたいと思います。以上。

 余談。やはりひろしは最高だった。後、おんたんとイソベやんと「はにゃにゃフワ~」のイントネーションを知りました。想像してたのと全然違ってた。
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