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佐々木、イン、マイマインのペインのレビュー・感想・評価

佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)
4.3
『岬の兄妹』然り、ふとこうしたキラリと光るインディー系邦画に出会える瞬間は実に幸福だ。

“ヘタウマ”といえば聞こえはあまりよくないかもしれないが、本作や『岬の兄妹』は、“ヘタウマ”な傑作と言えるかもしれない。

潤沢な予算、豊かな撮影環境、隙なくブラッシュアップされた脚本、人気実力共に最高レベルな役者陣といったものが揃った素晴らしい作品は数あれど、それらがすべて満たされていない、未完成が故に発せられる映画としての輝き(※ヘタウマの“ウマ”の部分)が本作には確りとある。とはいえ勿論、インディー系の邦画の中にはその“ウマ”の要素が希薄な作品があるのも事実だが。

昨年の『37セカンズ』に始まり、『花束みたいな恋をした』『街の上で』と話題の邦画に今引っ張りだこな“持っている”女優・萩原みのりさんは、本作でもやはり流石の存在感。特に彼女の“目”に物凄く引き込まれます(※本作の内山監督とのご結婚、誠におめでとうございます🙇)。

アバンタイトルがすごく『バードマン~』っぽさがあって良いし、劇中の“佐々木コール”の時とかに何度も爆音でかかるナンバーガール風の劇伴と、その“初期衝動感”は個人的にどこか寺山修司監督の『書を捨てよ、町へ出よう』なんかにも通ずるものも感じた。

いずれにせよ、“YouTubeでの考察待ち“的な流行りの謎解き映画とは対局にある、“心にぶっ刺さるか刺さらないか”の二極的なアナログなパワーに満ち溢れた作品だ。

内山監督の食事やタバコを使った描写とかも無茶苦茶良いし、衣装や美術も非常に考え抜かれている。また青みがかった映像、撮影の美しさも目を見張る(※撮影監督を調べたら『ミスミソウ』や『きみの鳥はうたえる』、『宮本から君へ』といった近年の素晴らしい青春映画を手掛けている四宮秀俊さんとのことで納得)。

あと脚本&佐々木役の細川岳さんの友人のエピソードが元らしいので、どこまでが本当かはわからないけれど、苗村役の河合優実さん(可愛い)がカラオケで歌う曲が西岡恭蔵の“プカプカ”だったり、佐々木が中島みゆきの“化粧”だったりチョイスが無茶苦茶、渋イイです。
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