風来坊

警官の血の風来坊のレビュー・感想・評価

警官の血(2022年製作の映画)
3.5
原作は佐々木穣さんの傑作警察小説。直木賞は逃したが2008年の「このミステリーがすごい!」で1位に輝きました。
これも日本の傑作小説を韓国で実写映画化。韓国映画はネタが無くなって来たのか日本の小説の映画化が密かなブームな気がする。

原作は親子三代に渡る警察官の執念の捜査と父親を巡る疑惑に翻弄される重厚な警察ミステリーとなっていましたが、本作はどちらかというと麻薬捜査と汚職疑惑のエース警察官への潜入捜査に重きを置いている印象。
警察一家の葛藤やルーツなどはあるにはあるがちょっと薄い気がします…。

殺人事件が麻薬組織の犯罪になったり、汚職に重点を置かれているのは韓国の情勢を反映していてらしいと思いますが原作好きにとっては評価が分かれる改変かなと思います。
原作は上下巻に渡る長編なので全部を網羅するのは厳しいし仕方ないですが、ちょっと省略し過ぎで原作の持つ重厚さは半減…。

事件の鍵を握るパク刑事が捜査のためとは言えサイコ過ぎる…ただ韓国と聞くとあり得るなと納得してしまう(笑)
原作の抑えるところは抑えているものの、やっぱり軽いなぁ…これが「警官の血」と言われると深みが無く浅いので納得出来ない部分も…。
もっと時代を紡ぐ感じが個人的には欲しかったです。

ただダークさは韓国映画らしさがあり、厚みのある人物の描写で最後まで押し通すのは面白い。チョ・ジヌンさんとチェ・ウシクさん韓国の実力派の演技対決は見応え充分。
大きく広げた割には最後は尻すぼみでガッカリでしたが、原作を少しモチーフにした韓国警察バイオレンスと割り切ればそれなりに楽しめるかと思います。
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