ボブおじさん

警官の血のボブおじさんのレビュー・感想・評価

警官の血(2022年製作の映画)
3.8
〝このミステリーがすごい!〟2008年版の第1位に輝いた佐々木譲の傑作警察小説を韓国映画界の実力派キャストで映画化。

原作は、親子3代に渡る壮大な年代記だが、本作は原作の第三部、孫の世代を中心に据え、父の存在を“封印された過去”と簡潔に位置付ける脚色としている。

巨額の捜査費を使って活躍する、犯罪組織との癒着を疑われるエース刑事を「最後まで行く」でも〝不死身のヤバい刑事〟を演じたチョ・ジヌンが貫禄十分に演じ、そんな彼の身辺調査、いわゆる〝もぐら〟をひそかに命じられた新人刑事を「パラサイト 半地下の家族」での飄々とした長男が記憶に残るチェ・ウシクが演じている。

また、同じく「パラサイト〜」や「梟-フクロウ-」で重要な役を演じていたパク・ミョンフンが本作でもクセの強いヤクザを演じて相変わらずの芸達者ぶりを見せている😅

白と黒の間のグレーゾーンを絶妙に渡り歩いて抜群の検挙率を誇るエース刑事の姿は「狐狼の血」で役所広司が演じた悪徳刑事の大上を彷彿させる。

〝毒を持って毒を制す違法捜査〟は、当然法的には禁じられているのだが、「ダーティハリー」や「リーサルウェポン」「狐狼の血」など、しばしば映画や小説に登場し見る者をワクワクさせ惹きつける魅力がある。

心のどこかに巨悪を挙げるためなら多少の悪は許される、そんな気持ちを持つ観客も多いのかもしれない。だが殉職を隠蔽された警官の父を持つ原理主義者の新人刑事にはそんな理屈は通用しないはずだったが…。

上層部から命じられた内偵調査を通して、混在する警官としての善悪と警察組織に隠された闇に辿り着くうちに、交わるはずのない2人の関係性が徐々に変わっていく。

果たして何が善で何が悪なのか?本当の悪はどこにいるのか?警官として自分がすべきことは何なのか?

韓国映画お得意のクライム・サスペンスの中に潜入捜査のスリルも加え、日本の原作小説を上手く韓国流にアレンジしている。



〈余談ですが〉
韓国映画における警察の描かれ方として思い浮かぶのが、無能・賄賂・汚職・暴力・体育会系・男尊女卑・村社会思想・冤罪など余りいい印象がない😅

本作は原作が日本の小説の為、悪に立ち向かう警官の姿が描かれているが、背景に見え隠れする韓国警察の描写は変わらない。

もちろん日本の警察組織の中にもそれらの要素は隠れているが、基本的には正義の味方として描かれていることが多いと思う。少なくとも映画の中では、日本と韓国での警察組織や警察官の描かれ方には随分と差があるように感じられる。韓国映画界は何か警察に恨みでもあるのだろうか😅