初ホンサンス監督作品ということで、観る前に批評をいくつか読んだら「反復と差異」という単語があって、ジル・ドゥルーズを思い出し、ドゥルーズの反復と差異の意味を浅く再確認して鑑賞した。
「反復と差異」とは: 差異を生み出すのは反復。この反復は毎回同じではなくズレがあり、反復を繰り返すことによりその小さなズレが差異となる(間違ってるかも)。
映画もまさしく反復だった。まず、大枠である主人公ガニ(キムミニ)が友人を訪れるという行為の反復が3回ある。
そして各訪問先を3局面として分けて考える。3局面に共通してあるシーン(反復)だから見える差異。他2局面で反復しているのにある1局面では出てこないシーン、それもある意味差異??結果的に反復を繰り返したことによって得た差異は何なのか。
「逃げた」という観点からも考えてみたい。逃げたという言葉からすぐ浮かび上がる疑問は誰が?と何から?という点であるが、わからなかった、誰なんだろう(笑)。もしガニが「逃げた」のなら、結婚してずっと一緒にいた5年間というのはある意味逃げていて、そして今回の友人訪問はそんな逃げてた自分からさらに逃げた行為じゃないのかと、5年でひたすらに空っぽになってしまった(された)ようなガニを見て思った。
男性が画面に出てくる回数は少ないけど、会話の中でひたすらに感じる強い男性の影は『燃ゆる女の肖像』とリンクした。
海の波、あれは反復、同じようだけど同じじゃないことの繰り返しという暗示なのか。
素晴らしい映画だった。