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逃げた女のrのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
3.8

"毎日がつまらない"とか、"年下と寝ちゃったんだよね"とか、自然と言葉を紡ぎ外に出すことでその物事を消化できる人たちと対面し続けるガミ。
本当は自分だっておなじように自分の中のわだかまりを吐き出したいはずなのに、その術を知らない彼女は、救いを求めるように人から人へと転々とし、彼らの話にひたすら耳を傾ける。答えをその中に見出そうとするかのように。彼女が自分の言葉で話すとすればせいぜい"私もこんなところに住んでみたい"程度であり、それだって果たして本心かどうかは不明である。

彼女の心の中の霧が晴れていくのは、恐らく様々な知人・友人を渡り歩いて行った先に訪れた映画館のシーン中だろう。暗闇に浮かび上がる真紅のシートにひとり腰掛け、静かに自分の心情を整理しながら画面を見つめる時間の尊さは私もよく知っているのでグッときた。スクリーンの中へと緩やかに導き放してくれるEDへの切り替えも良い。ホン・サンスはどうもハマらないことが多いのだけど、これは好きなホン・サンスだった(とはいえヘンテコなズームはやはり△)。
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