社会のダストダス

のぼる小寺さんの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

のぼる小寺さん(2020年製作の映画)
3.8
原作未読、出演してる人たちもほとんど初めて観る。まっさらな気持ちで鑑賞。

久々に劇場で観た邦画が本作で良かった。今のところ今年の邦画トップに躍り出ました(数本しか観てない中で)、ここ何年かの邦画で一番好きかも
クソ熱いこの時期に涼しい映画館で観るのがぴったりな映画だった。
静かだけど凄く温かい映画、これを観ていたら、もういっぺん高校やり直したいと思ってしまった。
(うっ!暗黒の青春時代の記憶が…!!)

ボルダリング部の小寺さん(工藤遥)。壁を見ると登りたくなってしまう、球技は苦手、ラーメンが好き、進路希望はプロのボルダリング選手、本人は真剣。
同じ体育館で練習する卓球部の近藤君(伊藤健太郎)。小寺さんをよく眺めている。まだ会話したことはない。

主演二人が作中ほとんど直接絡まない。
ボルダリング部の小寺さんと同じ体育館で練習する卓球部の近藤君、タイトルは小寺さんだけどどちらかというと近藤君視点が多い。
他のスポーツ部に比べて緩そうという理由で卓球部を選んだ近藤君だが、ひたむきにボルダリングの練習に打ちこむ小寺さんを見ているうちに少しずつ変わっていく。

主演の小寺さんと近藤君が直接会話をするのは劇中たったの2回。近藤君は卓球部の練習中にこっそり小寺さんを眺めている。周りの人たちには結構バレてるけど、小寺さんには気づかれてない。小寺さんに触発されていくうちに惰性で入った卓球部で頭角を現すようになってしまう。

小寺さんを眺めているのは近藤君だけではない。
同じボルダリング部の大人しい性格の四条君、小寺さんに好意を持っている。
写真部の田崎さん、小寺さんを盗み見ながらシャッターを切っている。
たまにしか学校に来ないややグレ気味の倉田さん、話してみると意外と良い子。

みんなクラスが同じというくらいで、特別仲が良いわけでもない。
青春映画だけど、それぞれの距離感がなんか良い。全国大会がどうとか劇的な展開が(あるにはあるが)待ってるわけではなく、地味な映画だけど少し前向きになれて優しい映画。

「ナイチンゲール」を観たときと同じヒューマントラストシネマ渋谷のシアター3で鑑賞。
あの時はメンタルを粉微塵に砕かれ体を引きずって帰ったけど、今回はスキップしそうなくらい晴れやかな気分だった。

伊藤健太郎君の文化祭の河童の格好がメチャクチャ似合ってた。