デヒ

君は永遠にそいつらより若いのデヒのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写会として鑑賞。
+ 10月8日武蔵野館
+ 10月16日武蔵野館

13年前、一人の子どもの失踪事件をテレビで見て以来、児童福祉士を夢見るようになったホリガイ。就職内定もできて卒業論文の準備をしながらのちのち生活をしている。

卒業論文のアンケートと引き換えの条件で哲学のノートを要求した友人。哲学史の授業で偶然出会ったイノギと友達になる。
岡山出身という点、両親の離婚、祖父母と生活など二人の共通点が見える。そのように二人は近くなる。

「君は他人に興味がなさすぎる」「目をそらして見なかったそんな人に他人の痛みがわかるかよ」ホリガイに付きまとう言葉たち。
映画の中の人物たちはそれぞれ痛みを抱いて生きている。そんな彼らの痛みを発見できないだけでなく、目をそらしてしまったホリガイ。ホリガイ自分もこんな自分の姿を自覚しているが、そっぽを向いているのは事実。
映画は時間が経つにつれ、他人の痛みに関心を持って近付くホリガイを見せている。この成長の道の中心には、ホミネの死とイノギが位置している。イノギの痛みにも気づき、絆を共有する二人。 この場面がホリガイの成長に当たって最も大きな転換点ではないかと思う。 二人は愛しているように見えるが、その愛とは痛みを抱いている二人の絆から感じられる愛だと思う。 二人の痛みが伝わってきて切なくて心が重くなる。

その後、ホミネの遺言をきっかけにショウゴくんに会いに行くと重なって見えるイノギ。 私は「ショウゴくん = イノギ= 明くん」だと思った。3人が置かれた状況もそうだし、それらを見つけて助けてくれる対象がホリガイという点も同じ。明くんは実際には登場せず対話の中だけ出てくるが、そんな明くんをイノギとショウゴを通じて映画の中に登場させていると思う。 彼らの姿に重ねて。
明くんとテレパシーができるなら何を言いたいのかという言葉に、「いつかきっと見つけ出すから待ってて。君の心で遊ぶ人は弱っていくから諦めないで。君は永遠にそいつらより若いんだよ」という答えをするホリガイ。その横で何か涙が滲んでいるようなイノギ。この場面から、イノギは明くんのような過去、痛みを持っていることが推測でき、明くんに対するホリガイの言葉は、イノギが聞きたがっていた言葉ではないだろうか。 そして映画を観ている観客の中でも同じ傷を抱いてる人がいるかも。その人たちにも慰めを与える。私みたいな。凄く良かった。
ホリガイは「他人の痛みがわからない」から「痛みを気付くことになる」になる。成長。

本当に、タイトルうまくつけたと思った。映画を見終わった後、タイトルを見ると、いろいろな感情が浮かび上がる。
ストーリーもとてもよかったし、映画の撮影も編集もすべて自然で、気になることなくストーリーに集中して見ることができた。
俳優たちの演技も素晴らしい。これからも2人のこのような淡々として繊細な演技をより多く見たいと思った。
オンラインで見ても心が重くなったのに、映画館で見たらもっと重みが感じられるだろう。ぜひ映画館で見ることをお勧めしたい。
本当に良い映画をオンライン試写会として先に鑑賞できたことに感謝。
+テアトル新宿で鑑賞。オンラインと気持ちが全然違った。もっと重くて苦しい。もっと映画が好きになった気がする。
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