どらどら

君は永遠にそいつらより若いのどらどらのレビュー・感想・評価

5.0
-その言葉で、じゅうぶんだと思う

だるい日常
それでも、生きてるだけで擦り減る
他者の悪意、社会に溢れる悪意、自分の悪意
傷に溢れ、それでも他者の傷にはどうしたって無自覚で、そのことが情けなくて、その欠落をどうしたらいいかわからなくて

他者の痛みに、傷に、真に共感することなんてできなくて
それは圧倒的に「他者」の傷で
「人様の人生を変えられる」なんて傲慢で

それでも、その他者の傷は自分の傷で
焦燥が、追い越す

言葉にならない思いこそ真実なのかもしれない
ただ、柵を越え、船に乗り、チャイムを押す
それだけで、世界は変えられる
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津村記久子、伝説のデビュー作の映画化
僕はホリガイさんが今まで読んだ小説の登場人物の中で一番好きで、その痛みはまさに自分のもので、原作小説を読んだ時に溢れ出した感情は間違いなく僕の人生を変えた
ヌクヌクと育ってきた自分が社会の悪意に勝手に擦り減り、でも圧倒的に当事者ではない自分
そのギャップに苦しんでいた時にこの本に出会い、その全てを肯定してもらえた気がした

この映画は、原作というよりは「原案」に近い感じがする。主要な登場人物が2人消えているし、さまざまな時間関係とか人間関係も大幅に改変されている印象。
でも、これは圧倒的に「君は永遠にそいつらより若い」だったし、あのエッセンスが濃密に凝縮したような作品だった。
ホリガイさん同様にとっ散らかったストーリー展開。意味のないエピソードの連続。だるい日常。
でも、その裏でそれぞれが抱える痛み。とっ散らかったエピソードが、とっ散らかったままに一体化する感覚。人生なんて、人なんて、とっ散らかったもんなのだ。
原作が書かれた時よりも、よりネグレクトなどの社会問題がシビアになってきている現在、この映画が改めて作られることは、ホリガイさんと同じ悩みを抱えている多くの人間の道標になるのではないだろうか。

佐久間由依、奈緒という主要キャストが完璧。ホリガイさんとイノギさんでしかなかった。
パンフレットも高いけど最高なので、ぜひ手に取って欲しい。
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