コッペパン

君は永遠にそいつらより若いのコッペパンのレビュー・感想・評価

3.8
2024-71
大学生のつまらなさとか語り口とかにソワソワする感覚もありながら、割と、かなり好みの話だった。

相手に触発されて自分の気持ちに踏み込むきっかけを貰って言語化された言葉や、誰かの立場を無遠慮に踏み荒らさないための距離感。そういったものを鋭く感じ取って柔らかく描いていて、いじわるな奴がいなくて良い映画だったな

堀貝は一貫して他人の人生に介入する姿勢を見せる。「そこにいて助けてあげられなかったことが悔しい」と言い放ち、相手が隠していることも気付けなきゃいけなかったと後悔し、児童福祉士となってガラスを破る。
猪乃木の傷、穂峰の死、行方不明のあの子。
わかってあげられなかったこと、その場にいようがなかったしその余地も可能性もなかったのに、堀貝は堀貝の人生を通り過ぎただけの人たちに「一生気にする」と目を向け続ける。
その視線ってかなり一方的でエゴも呵責も含まれていて、下手すれば暴力的だけど、堀貝は不器用だからただド直球に優しいものとして貫いていた。
すごい。あの強さを獲得しようとしてもできない。やっぱり他人に介入することは怖いし、馬鹿にされるし、正しい訳ではない時もある。
そうやって怖気付いて理由付けて避けていた感覚を、とっ散らかった思考だとしても自分の頭で考えて行先を決める彼女の姿勢を見て、馬鹿にしたくないと思った。他者に手を伸ばし目を向け言葉をかけ続けるその直向きさを少し貰う。
そして堀貝の雑然とした優しさを受け止める猪乃木という存在も痛みを隠し、距離を測り、その上で穏やかに存在していて、悲しくも強かった。優しすぎて切ないまでに強い人が多い映画だった。