スターリンは、死んで時を経て批判の対象となり、この映画もスターリンを両手をあげて賛美する内容ではない。
しかしながら映像からは、群衆に愛され慕われていた様子が、彼らの表情から見て取れる。
歴史として詳しく検証されて、その後彼の言動によって招かれるが現実幸福ではないと知っているからこそ、我々はスターリンを批判的に見てしまう。しかし当時の群衆にとってみれば、スターリンは偉大な指導者でありヒーローであったのだということは明らかだった。そう考えると、必ずしも悪役ではないし、同時代を共有した人々にとってそのことが幸福だったのならば、それはそれでひとりの人間として素晴らしい役割を果たしているのではないかと思ったりした。こんな、表裏一体さはゴロゴロ転がっているのだということを最近よく感じる。
観終わり、映画館を出ると、なんだかいつもよりも渋谷の街が静かに感じ、確かにこの映画の時代と場所と同じ空気を共有していることを実感した。