くさむすび

アウステルリッツのくさむすびのレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
3.7
「働けば自由になる」と書かれた門を介し、その門をカメラにおさめる観光客を撮ったかと思いきや反転して今度は観光客のカメラを通してこちらが撮られる側になる。そこからこの映画を支配するカメラの存在を意識させられる。冒頭「Cool story BRO」というTシャツを着た人がいたり、パンと薄いスープしか飲めなかったという話の後にガイドに移動を促される食事中の人を映したり、処刑に使われたという柱の前で写真を撮ったり、それによって過去の残酷さとそれを経ての現在という対比が上手くなされている。『国葬』『粛清裁判』と同じ括りにされて<群衆>ドキュメンタリーと言われているように、有象無象の観光客を等しく映している。露悪的に観光客を映しているようにも見えるが、監督自身にその意図はないように思う。
面白い作品だったけど、やっぱりフレデリック・ワイズマンの観察映画はズバ抜けて面白いんだなと改めて思わされる作品でもあった。
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