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アウステルリッツのpherimのレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
4.0
強制収容所、ナチス、ホロコースト。惨劇を記憶する場で人は集団ごと、ガイドに従い、順路通りに歩み進む。牢獄、ガス室、焼却炉。

光景の全きリアル。スマホで話し続ける女、カメラを構える男、ボトルで遊びだす少女、空を見あげる少年。奥向こうに響き始める、ナチス“後”からの呼び声。ただ見据える視線の沈黙。


“ 過去が戻り来るときの法則が私たちにわかっているとは思いません、とアウステルリッツは続けた。けれども、私は、だんだんこう思うようになったのです、時間などというものはない、あるのはたださまざまなより高次の立体幾何学にもとづいてたがいに入れ子になった空間だけだ、そして生者と死者とは、そのときどきの思いのありようにしたがって、そこを出たり入ったりできるのだと。そして考えれば考えるほど、いまだ生の側にいる私たちは、死者の眼にとっては非現実的な、光と大気の加減によってたまさか見えるのみの存在なのではないか、という気がしてくるのです。”(W・G・ゼーバルト 『アウステルリッツ』)
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