サンヨンイチ

セイント・フランシスのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.5
女性にルーツを持つ
あらゆる人々が抱える諸問題を
余すことなく取り入れ、
しかし大仰しくなく日常に溶け込んでいる。
イースターエッグ並に
あちこちに散りばめられたメッセージは
実社会に隠れている(隠されている)
諸問題の存在を気づかせてくれる。

一つ一つを綺麗に解決する訳でもなく、
一種の諦観にも思える距離感で
冷静に対処している部分もあるが
上映時間まるっとかけてじっくりと
心に刺さっていく、
まるで低温調理法のようなカタルシスだ。

こうした作品のテイストを生み出しているのは
主演/脚本のケリー·オサリヴァンと
実生活のパートナーである監督、アレックス·トンプソンのコンビネーションに他ならないだろう。
登場する男性を露悪的なキャラクターとして描くわけではなく、
「理解しようとしているが、考え方がずれてしまった人」として描いているのが印象的。
男女の二項対立を作らない構成はチームの信頼があってこそできるフェミニズム的視座を持ったアプローチだと思える。

生理や中絶など、
“男性が関わりにくいもの”
“繊細に扱わなければならないもの”
と“ ”付けされる話題を
ストーリーの通過ポイントとしている作品に
男性クリエイターが主だって介在することは今後に向けて重要な意味を持ちそうだ。

全体的に笑いの絶えない仕上がりで
軽やかな見やすい作品になっており、
フランシスへの愛情が留まるところを知らない。
全員がキャラクターを確立しており
分かりやすく、エンタメ映画としてもとても面白い。

絶対に見るべき映画。