ぽち

デッド・シティのぽちのレビュー・感想・評価

デッド・シティ(2019年製作の映画)
3.4
ゾンビ物としては平凡で中だるみのストーリーなどレベルは高くないが、身の危険を顧みず今作を撮った監督の、ストレートな社会批判は痛いほど伝わる作品。そして気迫を感じる。

今作を観てつまらないゾンビ映画と切り捨てるのは、あまりに映画を観る目がなさすぎる。

私も時事に詳しい訳ではないので、観ながら理解したわけではないが、作中の難民や軍の表現、そしてエンドロールでのインタビューを見れば、裏のテーマが見える。

観た後調べてみたい気になったと言う事は、それだけで監督の意図した「世界に知ってもらう」事の第一歩で成功している。

チャベス政権から今のマドゥロ政権の独裁政治の結果として、隣国へあふれ出た400万人に及ぶ難民。そしてベネズエラを利用した大国同士のせめぎあい。その惨状を知る事が出来ただけでも存在価値のある作品だろう。

撮影時にはスタッフの安全のため護衛が常時付き、道路に散乱する壊れた車の俯瞰映像は、CGや撮影のために並べたのではなく、リアル映像だそうだ。
そして本国ベネズエラでは政府から上映禁止処分にされている。

政治色が強かったり、体制のプロパガンダを含んでいるものは大嫌いで、徹底的にこき下ろす事にしている。
今作も政治色があることに変わりはないのだが、個人の小さな力で、できる限りのメッセージを発しようとしているところに感銘を受ける。
ぽち

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