なす

最後にして最初の人類のなすのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
3.9
約1時間、巨大かつ奇怪な記念碑の映像とアンビエント音楽とティルダ・スウィントンのナレーションが流れ続ける“だけ”、なのだがなぜか目と耳が離せない。

約20億年後の、滅びつつある未来の人類から過去の我々へのメッセージという形式。
映し出されるのは、ユーゴスラビア各地に実在する戦争記念碑なのだが、抽象的なモニュメントであるが故に、本当に20億年後のもはや概念と化した人類としか見えなくなってくる。

いま未来に関する言説は希望よりも“衰退ポルノ”があふれている。世界は、日本は、もう終わりだという悲観論を唱えることが知性であるかのように受け取られ、沈みゆく船の中でいかに効率よく快楽を貪るかが賢い生き方のように語られたりもする。

しかし、この作品の中で20億年後の人類は淡々と暮らし、淡々と滅亡に抗い、淡々と過去の我々にメッセージを発している。
日々の中で右往左往するのではなく、ただ“全う”せよ、と言われているような安心感に包まれる。
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