悠

ペルシャン・レッスン 戦場の教室の悠のレビュー・感想・評価

4.2
ナチスの親衛隊に捕まったユダヤ人の主人公が、処刑を免れるための弥縫策として自身をペルシャ人であると偽った結果、テヘランでレストランを開業したいというナチスの大尉を相手に自身が創作した架空のペルシャ語を教えるはめになってしまうという作品。
かなり興味を引く斬新なあらすじで公開当時SNSを中心に話題になっていましたが、この一見あり得ないような物語が実話ベースであることにまず驚きを隠せません。
内容は期待以上の手に汗握る非常にスリリングな展開の連続で、サスペンスとしても傑作と言える出来栄えでした。スリルと一口に言っても様々なタイプがありますが、自分はホラー映画によくある様な「見つかる・見つからない」というタイプのスリルよりも、嘘や不正行為が「バレる・バレない」といったタイプの作品の方が圧倒的にスリルを感じるため、終始その様な状況が続く本作はかなり楽しむことができました。
特筆すべきはナチスの大尉を演じる俳優の怪演。言動はもちろん表情一つ一つから滲み出る不気味さ、不安定さが観客の不安を煽り、その演技力の高さがレッスンの緊張感に拍車をかけていました。激怒した時の表情なんかは本当に失禁物です。
また、ただひたすらに大尉相手にレッスンをしている作品というわけでもなく、収容所内でドロドロの愛憎劇があったりと様々なドラマが入り組んでいるため、単調になりすぎずだれることなく観られます。結末もそこにそう繋がるのか…と感動する完璧な結末でした。
悠