勿論ナチスの非道を描いたものであろうがコッホの挙動だけ見ていると面白さが勝る。偏屈で傲慢なこの中年男は、自分が加担したもののおぞましさには目がいかず、その身がとうに大罪を背負っていることに気づかず、無邪気にも第2の人生を謳歌することを夢見ている。自分が纏うその軍服が、まともな人間の目にどれほど醜悪に映っているか理解していないが故の浅慮、短絡さが滑稽。健気であればあるほど笑いを禁じ得ない。まさしく道化である。
ジルがコッホに「なぜナチスに？」と問いかけた場面、「ただなんとなく」と答えたそれに''大衆''というものの恐ろしさを見る。お兄さんとの明確な対比が痛いよな、と。
