阪本嘉一好子

When I Saw You(英題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

When I Saw You(英題)(2012年製作の映画)
5.0
1967年の映画でイスラエルがウエストバンクのBayt NubaやAyn Karimに侵入してきたので、パレスチナ人がヨルダンへ難民として逃れ(追い出され)、国連の難民キャンプで新しい生活をし始めた12歳のトレック(Mahmoud Asfa)と母親。国連の寄付から食べ物や最低の生活は賄われるが、スープはまずくて彼にとっては満足できない。なかには20数年もこのキャンプで過ごしている老女性がいることがわかってトレックは難民キャンプにいては父親は探せないとおもう。トレックは利口だから、ここで待っていてはイスラエルで別れ別れになった父親に会えないから自分で探したいし、それに、もしここにいてもこのおばあさんのようになってしまうと思ったのに違いない。ましてや、難民キャンプの学校では頭が良い彼は先生から差別を受けている。この難民キャンプは米国の太平洋戦争中の収容所(有刺鉄線の外には出られないが)のようで、キャンプの中で呉越同舟なら文句ないが、ちょっと人と違っているとこんなところにはいられないし、いたくもないだろう。

彼は頭が良いだけでなく、行動力があり、やろうと思ったことは一人でもやる意思の強さのある人間で、かえってそれが、母親の思うようにならない。フェダフィー( Fedafee)というイスラエルに対抗する、反イスラエルのアラブの部隊のグループの仲間にイスラエル方向に歩いていると、砂漠で拾われて、部隊で過ごすが12歳なので兵士としてリクルートはされず、将来を有望しされ、司令官や皆に気に入られる。しかし、このフェダフィーのなかで考えが違うものが少しづつ仲間割れし始める。
難民で甘んじている人と、そこから希望を持って何かをやり出す人は違う。トレックはましてや12歳なのに父親を探すために、ヨルダンの難民キャンプからウエストバンク(エルサレム)に戻っていく。

この監督のこの作品に人間としての根性を感じる。政治が生活の一部になっているのが当たり前だという世界に住んでいる。簡単に物事を諦めない力強さを持つことが、これからの社会にこういう人はもっと必要だと思う。パレスチナに自由を!