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誰がキャプテン・アレックスを殺したかのドントのレビュー・感想・評価

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 2010年。ウガンダのハリウッド=ワカリウッドことワカリガで作られた初のアクションムービー。マフィア殲滅のため投入されたキャプテン・アレックス率いる部隊がボスの弟を捕獲。怒りに燃え襲撃を企てるマフィアだったがまさに決行のその直前、アレックス隊長は何者かに射殺された! 一体誰の手によって……!?
 世界を席巻した『クレイジー・ワールド』、スタイルの固まった『バッド・ブラック』、そして本作と製作順を逆に、遡るように観賞した結果、なるほどこのように「ワカリ・スタイル」は形成されていったのかとおおいに頷いた。一言で言うと全ての元凶(?)は、ハイテンション活弁士・VJエミーだったのだ!!
 本作、あとの2本と比べると確実にVJの活弁を無理くり後から付け足してある。音声のバランスとか無茶苦茶である。それ以前に台詞が聞こえねぇとかいう指摘はさておき……。VJエミーによる「コマンドゥッ!」「アクションムービィー!」「ンンンニョニャニ ナギョヤウ!」などのナレーションを抜くとこれ、普通の低予算自主制作映画となるのだ。もちろん出演者らの身体能力や人類がはじめて目にする「空爆」シーン(ここ、あまりのデタラメさに感激して涙が出た。マジで)など、凄味の宿る瞬間はあれど、まだ普通の範疇。
 おそらくはじめて作った長編アクション映画に監督、「なんか物足りないな……わかりづらい気もするし……」と思ったのだろう。そこで思いついたのが異常過多、不要なものもどんどん喋るナレーション野郎の投入だったのだ。たぶん。そして奇跡が起きた。「これだ。これがワカリウッドになるんだ」、監督は、思った。それゆえ荒削りよりさらに荒削りなホームメイド映画であるが、伝説のはじまりだと思うと感慨深いものがある。
 冒頭で、「この映画は他の作品を格納しようとデータ量を削ったため、画質がよくない。ご理解いただきたい。──2010年当時、私たちの映画が世界で公開されるようになるとは、夢にも思わなかったのだ」なんて字幕を読ませられちゃあ、「そうか……よかったな!」ってなるじゃない。感動的じゃない。それなのにこの人を食ったオチよ。どこまで計算でどこまでマジなのか掴めない。おそるべしワカリウッド。世界人類はこの映画の都の動向を刮目すべし。
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