ドント

真・鮫島事件のドントのレビュー・感想・評価

真・鮫島事件(2020年製作の映画)
-
 2020年。ウェブ通話で雑談をしていた若者たちが、2ちゃんねるから発生した恐怖譚「鮫島事件」の呪いに取り込まれていく。
 後年『きさらぎ駅』『リゾートバイト』を作る永江監督の、2ちゃんねる洒落怖三部作の一本目に当たる。公開は20年11月で、コロナ禍第一波の最中に撮影されたと思われる。外出自粛のお願いやら店が閉まるやらで、映画の撮影だって滞って大変だったのである。街行く人がみんなマスクをしてるのはそのせいなんですね(後年の人々のための説明)
 映画作りにはにっちもさっちも行かぬ状況を逆手にとった「ウェブ通話越しのホラー」がこの映画なのだ。似たシチュの作品は幾つかあるけれど、本作にへばりついているのはやはりコロナ禍下の呪いめいた空気であろうか。「外が異様な世界に変わっている」「呪いと感染症の類似」「ウェブや通話越しで、直接に触れ合えない」というあたりの閉塞感、ディスコネクトぶりが前に出ている。
 元ネタの「鮫島事件」って言わばタイトルだけの怖い話であって、中身はほぼカラッポなので何でも入れられる。何でも入れられるにしてはもうちょっとイイもの怖いものを入れてほしかった気持ちも残るけど、触れてはいけないものに触れて関係ある人も無関係な人もどんどんやられていくあたりの不条理、無慈悲さはよかった。
 ただ、撮影の厳しさなんかもあったろうけど、もうちょい演出とか積み重ねとかそういうものを上手く回せなかったものか、という歯がゆさもかなりある。ウェブ上の状況とオフライン(自宅)の状況の噛み合わせがぎこちないのだ。『アンフレンデッド』『Search』という「ウェブ上で完結」する優れた作品が既にあるのでなおさらそう感じる。冒頭はよかったんですけどね……。
 あと、観てる人への「いやがらせ」がもっとほしい。向こうは心霊なので何をやってきたっていいのだし、オバケさんにはガンガンに攻めてきてほしかった。ついでに書くと元凶となった廃墟に書いてある漢字、あれ要らなくね? こう、平たく言うと、おかしい。「え? なんで?」と声が出てしまった。
 食い足りないものの、『きさらぎ駅』『リゾートバイト』と比べると真っ向勝負を仕掛けている作だとは感じる。気概は買いたい。ところで2024年にこれを観ると洒落怖をフィーチャーしたOPで「きさらぎ駅」「リゾートバイト」「禁后」などの文字があり、なかなか感慨深いものがあった。
ドント

ドント