2010年。なんでこの面白そうな題材がこんなんになるのかわからんです。夜の高校にフードを目深にかぶった怪人が侵入してきて人をころしたりするスラッシャーホラー。
特に序盤、人物のバストアップ以上の「寄り」の場面があまりに多い。ここは学校です、ここは教師の自室、これは学校そばの路上だよ、と言うような引きの画面がろくにないのだ。「舞台はここでござる」なショットがひとつもなく、人間と顔ばかり撮っていて実にせせこましく、なんだかイヤになってしまう。
ほとほと参っていると怪人が出現する。困ったことにこの怪人がイイ。ものすごくイイ。目深に被ったフードにズボン、スニーカーという地味な出で立ちのくせに、顔の部分が真っ暗で一切喋らない。かつ超・身軽。さらに面白いことに……(ネタバレにつき伏)。
こいつが背後をサーッ……と通りすぎたりヌッ……と現れたり棚の上をスッスッ……と動き回ったりする。映画の殺人鬼と言えば重量級のイメージが強いので、すっごい動くというだけでキャラが立ちまくっている。思うにこやつ、「非行少年を怪物化した」ような存在なのだろう。この存在感と振るまいは殺人鬼キャラとしてかなり突出している。とてもよい。こいつが出始める直前くらいからカメラも引きはじめるのでやっと映画が「動く」ようになる。
が、しかし。そうであっても映画がせせこましいのはあまり変わらない。フード怪人が出てる所は面白いと言えるし、グロやゴアもそれなりに、いやちょっとだけあるのだけれど、全体に未整理な印象なのだ。そんなんなので全てを放り投げるオチにも反感しか生じない。よく出来た作ならば「おおっ……」と感心もしようが、こちとらゴチャーッとしたのを見せつけられていたのでフゥン……としか思わない。
そんなわけで観ている時はずっと「ハァーもったいないな」「リメイクしねぇかな」「リメイクしてほしいなこれ」と考え続けていた。全体にフニョフニョなのに、フード怪人の佇まいには見るべきものがある、そういう悩ましい映画である。リメイクしてほしいなぁーッッ。