おいなり

大怪獣のあとしまつのおいなりのレビュー・感想・評価

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
1.4
公開直後の大批判祭りからほとぼりも冷めた頃に、なぜかプロデューサーがインタビューにて燃料を再投下してまたボヤが起きてる本作。せっかくなので少し追記しました。
以下、核心に迫るネタバレに触れてます。



最初にひとつだけフォローしておくけど、めちゃくちゃヒドい映画でしたが、さすがに「令和のデビルマン」と言われるほどではなかったです。

実写デビルマンと言えば、

「こんなの映画じゃない」

「一人残らず演技がヒドい」

「CGがPS2の底辺ゲーム並」

「大学生サークルの自主制作映画の方がマシ」

「幼稚園児の演劇会みたいで微笑ましい」

「悪意がないとこのレベルのクソは作れない」

「東映の悪ふざけ」

「ゴミ」

「カス」

……などの悪評で有名ですが、本作はちゃんと俳優が何言ってるか聴き取れるし、CGもPS3くらいはあるので、まぁデビルマンが10点だとすると大怪獣は100点はあげてもいいレベル。
100億点満点で。



とにかく全方位に渡って全てが滑りまくっていて、面白いと言える部分がひとつもない。1秒すら面白い瞬間がない。ここがダメ!と論って笑うほどの部分もないけど、ただただ全体を通して平均的につまらないという感じ。
撮影中、誰か一人でも疑問を呈さなかったのか?「ここでいきなり登場人物が歌い出すのはおかしいです」って思わなかったのかな。俳優全員、監督に逆らったら爆発する小型爆弾を脳に埋め込まれてたとしか思えない。
脚本が支離滅裂なせいでただでさえシーンの繋がりがムチャクチャなのに、演出手法も拙いとかそういう話以前の問題で、メロドラマっぽいダサいスローモーションの多用、何が起きてるのかわからないアクション、わざとチープに撮ったとしか思えない合成映像……。こんな商品未満の不良品で1900円もとろうとするなんて狂気でしかない。
実写デビルマンはまだクソすぎて笑える歴史的資料として観る価値はありますが(ぼくはお金もらっても二度と見たくないけど)、本作に関してはクソとゲロのシチューを見せられているようで、嫌悪感しか湧いてこない。

よくつまらないことを「寒い」と形容しますが、つまらなさを突き詰めるとマジで寒気がしてくるんだなと思いました。しょーもないギャグを延々言って空気を冷やしてくるあのおじさん、そういうキャラだとわかっていても何か喋るたびに胃がキリキリ痛むくらいつまらなくて不快だった。
オダギリジョーはキャラも演技も良さそうな感じで出てきたのに、意味不明な作戦に参加を要請されて、作中で一切説明されない因縁でそれを断って、その3分後によくわからない理由でやっぱり参加して、何があったのかよくわからんままフェイドアウト。この人まるまる出てこなくても問題ない。なんで出演引き受けたんだろう。弱みでも握られてたのかな。
他のキャラはあんま覚えてないけど、まぁほぼいなくても問題ない。


怪獣の死体を海に流すためにダム爆破して町ごと押し流すという無茶苦茶な作戦で、いよいよ山場っぽいな、やっと終わったか、と思って席を立とうとしたらコレまだ中盤で、失敗だ!次は焼肉屋の排煙装置作戦だ!って言い出した時は人生で3本の指に入るくらい長いため息が漏れた。
この映画が2時間しかないってマジ???全体的に6時間くらいに感じた。超人薬飲まされたザエルアポロか?

いちおう「怪獣を倒した謎の光の正体とは?」という物語の縦軸となるミステリー要素もあるんですが、最後の最後まで引っ張った挙句、実は主人公が怪獣を倒した光の巨人でした!というなんの捻りも面白みもない予定調和が突然明かされて、ウルトラマンよろしく変身した主人公が怪獣の死体を宇宙に運んでめでたしめでたし。「映画開始5分でその解決法をとっていればよかったのでは」とか言わないように。本人もわざわざデウスエクスマキナです!って言ってるし。

今時の映画らしく、戦犯リスト……もといエンドロールの後にもオマケ映像がありますが、もうこれがマジで震えた。恐怖を感じましたね。背筋が凍りつくような、ジョーカーが俺の口にナイフ突っ込んで「俺の父親はな……」と話し始めた時のような恐ろしさ。


予告編がイチバン面白かった本作。大怪獣を倒した後の死体処理をどうするのか……という、映画ではあまり見せない部分にフォーカスを当てたコンセプトは光ってたし、シン・ゴジラを露骨にパロったようなキャラクター描写は、常識的にちゃんと作ればそれなりに面白いものになったはず。
それがなぜこんなことになってしまったのか。監督の実力不足で済ませられれば一番楽だが、それだけではない、日本映画業界の闇の一端を見てしまったような不穏さがある。
信じられないくらい低俗で下品で、正気を疑うような展開が本当に多い。こんなものをさも特撮大作のように見せかけて宣伝打ったやつらはマジで外道だし人間じゃない。
ゲロだのクソだのSECUMだの(CUM=精液)、下品なのはある程度そういう芸風なんでしょうが、クスリとも笑えない分だけコロコロコミックの域にも達してない。



挙句、公開後にプロデューサーが「伝えたかった三角関係の部分が伝わらなかった」「政治風刺が通じてなくて驚いた」などと意味不明の供述を繰り返しており……。
そもそも本作を褒めてる少数の奇特な方ですら「登場人物の三角関係が良かった」と言ってる人はほぼ皆無で、むしろ三木聡監督のナンセンスギャグを楽しむ映画なのに不快な不倫夫婦のしょーもないキスシーンがノイズだったという意見すら散見される中で、実は製作者がイチバン本作で伝えたかったのが邦画にありがちなうっすい恋愛描写だったというからもう驚愕するしかない。
政治風刺に関してもそもそも本作の「元ネタ」たるシン・ゴジラがやってたことの縮小再生産でしかなくて、100歩譲って伝えたい部分の面白さが観客に伝わらなかったのが敗因と仮定しても、それは伝える側であるプロデューサーの能力が致命的に欠如していた結果に過ぎないのに、「いや〜、ちゃんと見てくれたら評価されるはずなんですけどね。そんな難しくした覚えはないんだけどなぁ〜(笑)」とまるで観客の理解力が足りてないから本作が失敗したとでも言いたげな物言い。
そもそもナンセンスギャグの極地たるクライマックスの展開についてすら「切ないラブストーリー」と評しているあたり、完全に監督との意思疎通ができておらず、この人たち何の役に立ったの???という疑問しか残らない。
「三木聡監督作品は人を選ぶ」ということを覚えておくのはもちろん、東映の須藤泰司と松竹の中居雄太という、この二人の無能プロデューサーの名前も今後のためにいちおう脳の片隅に刻んでおきましょうね。



いろんなものをパロディしてる割に、ネタ元へのリスペクトが1mmもなくクソ塗りたくってるだけ。思い出にゲロぶっかけられた気分。観ない方がいいです。お願いだから観ないで。
おいなり

おいなり