視力

大怪獣のあとしまつの視力のレビュー・感想・評価

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
5.0
「大怪獣のあとしまつ」観ました。
面白かったです。

個人的に好きな方向の面白さでした。ただこの僕が感じてる面白さは賛否の中でも少数派な気はします。
僕は正直、怪獣映画も深夜ドラマよくわかってないのですが、テンポとか絵面が好きです。
「MVを流し観るような面白さ」でした。








僕が一番印象に残ってるのは、
「机ぶっ壊すとこ」です。

全然意味なくてすげぇ面白かったです。
笑っちゃいました。こういうシーンとかイントネーション重視の台詞回しが先行しててそれを無理矢理ストーリーで繋げてサンプリングしてる感じ。それがある程度適当に観てる人にはとても心地良いのだと思う。


おそらく観返すとキスシーンの一個一個すら面白く感じちゃうと思う。お酒でも飲みながら何回も観たい。そういう「ツッコミ所」みたいなのを登場人物全員がスルーしてるの込みで楽しむのが適してるとも思う。なので逆撫でしてる訳ではないのですが酷評されてるのすらめっちゃ面白いと思っちゃう。


「オチ」とか「風刺」とかそういう事じゃないと感じる。久しぶりにこういう「気持ち悪いもの」を観たなと思えて良かった。そしてこれが狙いかは分からないけど、なんかこういう類いの物が大衆的なところに届いてしまってその反応も込みで作風となる現象みたいな流れが根付いてるのかなとも思いました。



なので「怪獣映画」とか「深夜ドラマ」等の支持層に論じられてると思うのですが文脈としてはやっぱり「アングラお笑い」的な点を踏まえれるとより面白いんじゃないかなと感じます。「三木聡」という人と、あと「大日本人」とかと比較してみたり。(どちらかと言うと「しんぼる」に近い面白さかなと思う)


僕は一応三木聡という人はなんとなく知ってて「亀は意外と~」「インザプール」は観ててあと「時効警察」も何回か観た事あるくらいなのですが個人的にはシティボーイズライブの作家の人という印象が強いです。で、三木コントの面白さって2種類あると感じてて、「変な間」と「意味無い掛け合い」です。


あくまで観てる側の勝手な印象論ですが三木聡さんがこういったコントから演劇やドラマの脚本家としてパブリックな段階を踏んでいくに辺り「意味ない掛け合い」の方の比重が膨らんでいったような気がする。「変な間」は中心点的に鎮座してるけど省エネ気味になってる。ブランド化もされたのかも。

つまり「意味ない掛け合い」が「意味ありげな台詞」になってかざるを得なくなってきてて。というか観客もそう解釈してしまう風潮になってると言うか。ストーリーもへったくれも無いのに伏線とか物語背景とかを考察されてしまうのでそこへの含みを散りばめた方がウケやくなってるからこうなったのかな。


そして「大日本人」との比較ですが、そういう点で観ると大日本人の方が物語がある。というかちゃぶ台返しをするためにむしろリアリティをそこへ向かって補強していった上で「変な間」過ぎない「意味ない掛け合い」過ぎない面白さを散りばめてるから観やすい。大怪獣のあとしまつはもっとハードコア。

ただ松本人志監督作品という先入観があるから皆「お笑い」として観すぎたんだろうなと思います。もちろんお笑いなのですがそれはちゃぶ台返し部分の濃度に集約されてるので。大怪獣のあとしまつは逆。「ハードコアお笑い」と思われなさ過ぎたんだと思う。

あと「大怪獣のあとしまつ」が酷評されちゃう現象は、キングオブコント2013でかもめんたるが優勝した時と同じような構造なのかも。コント好きじゃない人が想定する「お笑い」のラインから著しく外れててなおかつそういう「尖ったお笑い」として想定されるものですら野性爆弾とかザコシショウとかまで。


「怪獣映画」としてはふざけてるし
「コメディ映画」としては下品過ぎるし
「B級映画」としては振りきってない。
じゃぁなんなんだと言われるとそういう
「気持ち悪さ」を意図してる面白さ。
酷評する人もいるんだろうな…wって
最初から見込んでる作り方。

「なんか気持ち悪い種類のお笑い」

その上で好みが合うかどうかなのかなと思います。
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