【仁義ある戦い】
毎回安定したクオリティで大正末期の世相をパッショネイトに描き切るやくざ映画『日本侠客伝』シリーズ三作目。主演高倉健と鶴田浩二の顔合わせが絶妙で、男の美学をヒシヒシ感じるマキノ雅弘監督作品。
今回は築地の問屋を守るため、町人と力を合わせて土地の権力者と戦いを挑む「抵抗編」とも言えるお話で、やはり任侠映画お決まりのパターンを踏襲している。だいたいストーリーのオチは読めるのだが、脇役の長門裕之と南田洋子が夫婦共々に抜群の存在感を発揮していて役者のアンサンブルに尽きる映画。
大喧嘩、殴り込み、斬り込み等々、北島三郎の演歌に乗せてバッタバッタと悪人どもを薙ぎ倒すヤクザの豪傑ぶりが観ていて実に爽快。脚本は笠原和夫、野上龍雄、村尾昭の三人で。若干ユーモラスな場面もあり深刻になり過ぎず展開していく陽性のマキノ映画になっており大満足の一作だった。
現代で言うところの大企業や大手チェーンに組み込まれる中小企業を守りぬくお助けマンの話のようにも感じられ、仄かに社会正義臭がするところは黒澤明の『七人の侍』にも通底する。日本のアンダーグラウンド史のお勉強にもなる作品。