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ドント・ルック・アップのおーもりのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
3.3
小太りディカプリオが、トイレで緊張に悶ているだけで笑える。
しかし、ストーリーを通じて描かれる、首脳陣の愚かさ具合は流石に笑えないレベル。
世界が滅亡するという事実を誰も真剣に取り合ってくれない。
この世には、真実よりも強力な影響力を与えるモノがあるようだ。
世界まわしている老人達の私利私欲によって、真実・科学・世界・自分がぞんざいに扱われる。
笑えない冗談のオンパレードの絶望。
著名人とのツーショットが溢れる執務室や、くっそどうでもいいスキャンダルを供給し、けらけら笑うメディアと愚鈍な民衆。
どいつもこいつも目が眩んでやがる。
半年でも短い残された猶予が、1日1日と無駄になっていく。その積み重ねが世界を滅ぼすんだ。
あのIT企業CEOの爺さんが一番腹たった。
レディ・プレイヤー1での呆けた演技に和みを感じたが、その同じく呆けた笑顔をぶん殴りたくなる様な怪演。見事でした。

でも違和感をおぼえる箇所も多い。観客を苛立たせる為のご都合展開。
どこの者とも分からないトーシロをいきなり大統領の最前線にだすんかい。
あの惑星防衛調整局の局長が、初動をしくった事がデカいと思った。
今の時代、ニュースメディアに出なくたって、エビデンス付きで個人配信なんかでいくらでも情報拡散はできそう。
主人公以外の科学者陣がまっったく描かれない。アメリカ以外の国も登場しない。
カットインする世界中の様子はオマケ程度の描写。この地球にはアメリカしかないのか。
造り手の都合が良い様に、より事態の悪い方に進ませている様に感じてしまった。

でも最後の瞬間、事実から目を背けるように日常と変わらない会話をし続けようとする団欒。
最後まで空を見上げ続けていた彼らが、ついに視線を目の前の家族だけに向けて諦めた切ないラストだった。
生き残った無能な方たちは、どうぞ可能なかぎり無残な生き地獄を経て最期を迎えてくださいませ。