「空白」というタイトル。これしかないという作品だった。
本人不在の中、事件の真相がはっきりしないまま、その大きなブラックホールの周りで関わった人たちがそれぞれの立場でもがき苦しむ。モヤモヤした気持ち悪さ。でもこれ誰も悪くないんだよな。
きちんと向き合わないまま不慮の事故で娘を亡くしてしまった父親が、不在にあった後これまでの時間を埋めるように、娘の影を無心に追い求める。
取り返しのつかないこととか、後悔とか、憎しみとか、怒りとか、消化しきれない思い、そういうのを抱えてそれでも人は生きていく。この話はその過程のひとつ。きっと全員乗り越え方や飲み込み方がちがうんだと思う。
轢いた女性の母親が登場するところ。とってもいいシーンだった。これを描いた監督すごい!と思った。
でも、ここから一気にドラマチックに話が展開していくので、えー?!と思った。ここまでリアリズムを貫いてきたのに!この映画の一番大事な場面だけにちょっともったいなかったなー。結末を急ぎすぎた感アリ。素材があるなら再編集してもいいんじゃないかと思った。あーもったいない!
とはいえ、いい作品だったので、今年のアカデミー賞にしっかり食い込んでくるでしょう。ヤクザと家族、ドライブマイカーと並ぶかな。
特に松坂桃李。ばつぐんにうまい。いつ見ても顔色悪いけど、この役にはそれが完全にハマってた。古田新太は存在感あるけど、舞台の人なのでセリフ回しが大きくて、シリアスな内容にはちょっと浮いて見えた。藤原季節はがんばりすぎ。でも今クサイ芝居する人いないので、ちょっと新鮮かもw
それともうひとつ。
根本的に、人が死んだのに、誰も罪に問われないの???刑務所でしっかり罪を償っていればこんなことには…って思った。法律的なことわかんないけど、どうなんだろう。