kone

空白のkoneのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.8
観る予定はなかったけど偶然観ることになって
観てよかったと心から思う作品に出逢えました

お願いだから誰も帰らないで
この傑作を送り出したスタッフ陣の名前を見て
こんなにもそう強く思ったことはない
帰って行く人達の背中を見て少し悲しくなった
上映後に自然と拍手をしたくなったのも初めてだった

脚本に一切の無駄がなく、
登場する人物はみなそこらにいるような人達
遺族、原因となった者、運命に裏切られた加害者、
その家族、マスコミ、それに翻弄される人々、
偽善者(諸説あるけど私はあの人はただの偽善者だと思ってる)

描かれる感情は繊細であるものなのに
それ以上に繊細に描き出した脚本とともに
演者はその繊細な感情を丁寧に噛み砕いて演じ
最優秀男優賞と脚本賞あげちゃいますパチパチ
という気持ち(語彙力)

警察の無能さを描くのが韓国だとしたら
メディアの嘘を描けるのが日本
それを文句なしに描いたこの作品に感服した

終盤で映像に光が差し込む2つの瞬間が1番好き
1つ目の直前の会話はとても尊くて愛おしい

古田さん演じる役については、
みんな悪いやつだとか言うけれど
私は、単純に感情表現が苦手な優しい人だと捉えた
怖い感じだけど本当は優しいおじさんが元から好きで
あの役にも同じ感情を抱いたからきっとそうだと思う

松坂桃李さんはすごいなぁ
抑え込まれたひどく苦しく重い感情を
少しずつの変化で精神への負担を演じ表して
それが爆発した時はもう、この人はすごい役者さんだなと思った

下からネタバレです!!!!!
まだ観てない人は読まないで!!!!!
いい!?いくよ!!!!?!

あのお葬式の母の一連の謝罪は
古田さんのそれと完全に重なった
自分と重ねて見た彼はそこから変わり始めたのだと思う

結果花音ちゃんが万引きしたかどうかは描かれていない
この作品が描きたいのは誰が悪いとかではなくて
人の死にどう折り合いをつけていくか
被害者側にしろ、加害者側にしろ
大切な人が亡くなっても、世界は変わらずに進んでいくから
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