日常に起こってもおかしくない事件。
唐突に起きた出来事に、みんながどうすればいいか解らない姿がとてもリアルでした。
父親は父親で、受け止められない現実を受け止めるために事実を追い求めようとする姿が苦しく見えました。
反対に事実を全て知っているからこそ、じゃあどうすればいいのかとコタエが見つからず苦悩する店長、そしてその二人のそれぞれの周りの仲間たち。責任転嫁して逃げる人やどうにかしてあげたくて、一緒に闇に落ちていく人。
とても闇が深いドラマでした。
印象的だったのは「正しいとか正しくないとか善意の強要は苦痛でしかない」という店長の言葉。事実をそのまま伝えても都合のいいように変えられてしまうのを経験してしまうと、もうどうすればいいのかよくわからなくなってしまうのですね。難しい役だったと思いますが松坂桃李さんのなんとも言えない不安や困惑による混乱の演技が観る側を引きつけていたと思います。
あと父親役の古田新太さんの演技も圧巻でした。
この2時間弱の短い時間の中でも、じっくりと丁寧に父親の心情の変化が表現されていて、はじめと終わりの事件に対する自分の感情の処理の違いが違和感なく表現されていたと思います。映画特有の「展開の速さによる違和感」が今回全く感じられませんでした。
ただ、初めに担任の先生の少女に対する叱り方や、同級生の命令口調がとても激しかったので、あまり良い気分ではありませんでした。
いじめがあったのかなかったのか、本当に万引きをしたのかしてなかったのか、少女はどうして事務所から走って逃げてきたのか、など事実は解明されないまま終わりますが、何事も事実は一つですよね。そしてそれに対する解釈(真実)は人の数だけあると思うので、だから人と人が食い違ったり争ったりしてしまうのは仕方がない人間のサガなのかもしれません。
ただただ、
車を運転する身としては、
自分もいつ加害者や被害者になるかもしれない、誰が悪いのか正しいのかなんて訴えても誰も相手にしてくれない、
そのような出来事が明日起こるかもしれない、
そんな時はどうしよう、
考えてもコタエの出ない自問自答を繰り返し、起きないように未然に防がなくてはいけないと、心に強く思いました。