吉田恵輔監督の「ミッシング」が高評価なのでいつ劇場に行こうかと思案する中で、本作が2年以上チェックしたままだったのを思い出し、先にNetflixで鑑賞。
何故、これまで観なかったのか。この古田新太の何かを叫んでいる顔と誰かが土下座をしているあのジャケ写のインパクトが強すぎて回避していたのかもしれない。そして、もっと早く観ておけばよかったと反省した次第。
これはなかなか心を揺さぶられた。誰かが良くて誰かが悪いという単純な話ではない。終始、重く観ていて辛くなるシーンが続く。
古田新太演じる添田の怒りは、やり過ぎだが心情は理解できなくも無い。言い方は違っていても、今でも同様なことはある気がする。
大切な人の死を乗り越えるには時間が必要なのだとも思う。誰かの言葉が心に響くこともあるだろうし、自らを振り返る機会を得ることもある。片岡礼子演じる自殺した加害者の母の言葉には、添田と同じくこちらも心を打たれた。自分にはあの様に振る舞える自信はない。
また、添田に寄り添う野木や別れた妻の存在も大きい。添田の弟子・野木を演じたのは藤原季節。とてもいい役だった。本作にて彼を初めて認識したが、「止められるか、俺たちを」にも出演していたと鑑賞後に知った。
松坂桃李演じる気の弱い若き店長・青柳。何をしても後悔ばかりで逃げることもできず、反論もできず、謝るしかないという状況は本当に辛い。今ならSNSで自分の考えを発信できるのだろうか?かえって叩かれて潰されてしまうのか。それも耐えられない。土建屋の兄ちゃんの言葉には救われた。
寺島しのぶ演じる草加部は、気付かないうちに善意の押売りになってしまうちょっとイタイ人。否定されることも多そう。それでも彼女なりの生き方なのだろうと思う。青柳の心には届かなかったが、彼女の様な人も世の中には必要なのかもしれないとも思う。
マスコミや学校の姿勢は、皮肉たっぷりに描かれている。多くの作品でも同様に描かれているとおり、大きな組織は結局のところ上の考えが結果として現れる。内部的にはいろいろあるのだと思うが。
空白というタイトル。どこが空白なのか。描かれていない空白の時間。そして頭が真っ白になる瞬間も。家族のこともよく知らないという空白もあるのか。なかなか悩ましいタイトルだ。
皆どうやって折り合いをつけているのか。
さて、「ミッシング」はどんな作品なのか。