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青くて痛くて脆いのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

タイトルが出るまでの冒頭15分を観て挫折しかけたのだが、そこでやめないで本当に良かった。タイトルが出た後、物語は甘ったるい青春物語から急に暗い復讐ものへと舵を切る。

とにかく吉沢亮が素晴らしい。あれだけのイケメンにも関わらず圧倒的な陰キャ感。というか逆に吉沢亮じゃなかったらあまりの痛々しさに見ていられなかったかもしれない。自分から人と関わることを避け、信じていた相手がどんどん陽キャグループに染まっていくと勝手に裏切られたと感じて逆恨みする。彼が「死んだ」と言い続けていた杉咲花演じる秋好が、中盤普通に陽キャサークルのリーダーとして登場する演出にはゾワゾワした。自分にとっての理想の秋好が「死んだ」というだけのことだったとは。

杉咲花のキャスティングもピッタリ。冒頭、純粋無垢で変わり者で孤立しているように見える彼女を見たら、数年後に意識高い系サークルのリーダーになるようにはとても思えない。そりゃ確かに裏切られたと感じるかも、と主人公に同情すらしてしまうような絶妙なキャスティング。

そして終盤、彼ら二人が相対して言い合いをするシーンがとにかく圧巻。あの可愛らしい秋好から主人公に向けられる「気持ち悪い」という言葉の破壊力。自暴自棄になり、初めて思いの丈をストレートに相手に伝える主人公。彼の言う「誰でも良かったんじゃないか」を否定しかけてやめ、「そうだったかもしれない」と答える秋好の残酷で真っ直ぐなことといったら。そうして彼らはそれぞれ己の行動を振り返り、悔いることになる。しかし時は既に遅く、もう何もかも元には戻らないのである。「もし自分がなりたい自分になれていたら」という主人公の妄想シーンがひたすらに哀しい。

「自分は秋好にとって誰でもいい、間に合わせの存在だった」と言う主人公に対し柄本佑演じる先輩が言う「人って誰かを間に合わせに使いながら生きているんじゃないかな」という台詞がとても好きだ。相手に自分の理想を押し付けたり、自分が必要とするときにだけ手近な相手を頼ったり、いらなくなったら疎遠になったり、人間関係とは元々そういう無責任で自分勝手なものなのだ。そう思うと、ちょっと肩の荷が降りるというか、力を抜いて生きていけそうな気がする。

最後、ほんの少しだけ前に踏み出す主人公にわずかな希望を見せ、映画は幕を閉じる。本当にタイトルの通り、青くて痛くて脆い、絶妙なバランスだと思う。素晴らしかった。
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