マクガフィン

青くて痛くて脆いのマクガフィンのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.3
一見、こじらせ中二病的な大学生の暴走だが、世界平和を訴えるが一番身近でミニマムな関係と仲違いする構図は、世界共通。人生の意味や価値を見出せなくても、承認要求を満たされて生を鼓舞して執着する反面、根拠づけられなくなる虚無感が攻撃に変わる偏愛。そのシークエンスは興味深い。その「根拠」を〈遠い:世界平和〉と〈近い:女性の理想像〉としたり、サークルの理想とヒロイン像の乖離のセンスが光る。原作未読。

フレーム内フレームの多様による覗き見る模様。映画で扱うのが難しいスマホやSNSは健闘。思想や何やらではなく、スマホケースが一緒なことで共感を生む切っ掛けの些細な事、関係性はそんなものだろう。只、丁寧過ぎることとモノローグを多用することで、サスペンス要素や全体的なパワーは少し足りない。ラストはJ-POPやアイドルの曲の歌詞のような結末だが、それを狙っていることが良く、観客自らに託すラストは考え深い。

アイドルの追っかけに目覚めて、自己顕示欲を刺激されて、偶像崇拝して勝手に依存し、スキャンダルでイメージが崩れてアイドルを攻撃するオタク青年のプロセスのようだと見下していたが、ここまでいかなくても、意外と男が彼女や母親に求める理想のようで、原作者による、男や政治や企業のリーダーが求める根底にある心理を見透かしている感じに、心をえぐられるようにも。