イワシ

海を待ちながらのイワシのレビュー・感想・評価

海を待ちながら(2012年製作の映画)
3.8
ファーストショットの海面の揺めきを模倣するかのように踏み荒れた砂浜がつくる凸凹を映すクレーンショット、海を覆う大砂塵のような嵐、荒野を微々たる速度で進む船、ラストは到達でなく到来。海と大地が対立するのではなく重なりあうものとして描く。

さまざまな乗り物の運動を撮ってきたフドイナザーロフだが、今回は船に別の乗り物の運動を演じさせる。杭とパイプを利用し線路の上に船を乗せたかと思えば、駱駝を捕らえて駅馬車まで演じさせる。トラックに牽かれるときの速度による振動はまさしく列車。

忘れ難いペンキを塗る手。ささやかに上下に動く手が映る場面は短いが、船がどの画面でも鮮やかであるため、省略された場面でも常にこの動きが繰り返されていると思われ、それが船の僅かずつの前進とほのかに共鳴する。死、忘却、諦念、そんなものに対する抵抗運動のようなペンキ塗り
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