きれいなドレスと完璧なメイクで武装、
センスの悪いおハイソな家で
“良い妻”を演じる日常は
ものすごく居心地が悪そう。
この点は昨年の透明人間にも通じるようでした。
どうにかして勝ち取った“良い妻”であったはず。
どこに救いも求めても真摯に向き合ってくれる人などいない袋小路で、
生い立ちの呪縛からも逃れられないでいる。
飲み込めば飲み込むほどにゴールは遠く闇深くへ、
ますます満たされなくなっていく。
やっと逃げ込んだモーテルでさえ、
土をむさぼってしまう姿が痛々しかった。
ラストのショッピングモール、
すっぴんにトレーナー姿でジャンクフードを頬張る彼女。
どこにでもいる女性になって、
最後に飲み込んだのは中絶薬だったのでしょうか。
いろいろな女性達が行き来する女子トイレでのエンディングは、
彼女の存在を喧噪が飲み込んで
やっと解放されたかのようでした。