建野友保

Swallow/スワロウの建野友保のレビュー・感想・評価

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.4
家父長制度が色濃く漂う家族というコミュニティの中で自分の存在価値が認められず痛みを抱える女性が、別の痛みをもって痛みの相殺を図ろうとする物語。大きく括れば自傷行為を描いた映画なのですが、観客は異物を呑み込むという未知の痛みをもって、彼女の二つの痛みに思いを馳せることになります。その二重構造がまず面白いと感じました。物語はおおむね想像通りながら、予期せぬシーンに落涙します。
個人的には、去年公開された映画「透明人間」とテーマ的に(舞台となった豪邸でも)共通することや、「燃ゆる女の肖像」に登場したエロイーズの5年後と見ることもできる点が相乗効果で楽しめました。
ネタバレ自重しながらですが、シリア出身のお目付役、そしてメキシコ系の○○との対話が作品にスパイシーな役割を務めていましたね。
この正月、夫の実家への里帰り中止に安堵している妻や、その妻の思いを知る夫にも見ていただきたい作品。あるいは、この映画を夫婦で見てバトりながら、夫婦間の溝を可視化するのも、長い目で見れば名案かも。
追記/Swallowは「飲み込む」という意味だとレビューに書いた方がいました。ヤクルトスワローズはエルじゃなくてアールなのかな、などと思っていましたが同じエル。ということは、「飲み込む」と「一人で(単数形で)ツバメのように飛び立つ」という意味も兼ねているのでは! 想像に過ぎませんが、だとすれば凄いダブルミーニングです。
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