いぬちゃん

Swallow/スワロウのいぬちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

全体的にセリフ量が少なく、セリフで説明するのではなく、映像、芝居で見せるものが多く、とてもリアリティがあり、それでいて映画らしい美しい仕上がりになっていました。数多くのドラマ、映画の中には説明口調のセリフがありますが、この映画はそうではなく、映像を見せてくるからこそ、リアル感があり感動しました。だからこそ、役者さんの表情、言動が目立ってしまうから、演技力が試される映画かもしれません。。

Swallowの意味、飲み込むって意味ですが、侮辱などを耐える、無条件で受け入れる等の意味もあり、なるほどと納得しました。
主人公のハンターは、役職のついたお金持ちと結婚しますが、仕事や自分のことしかほぼ考えず、話を聞いてくれない夫、どこか疎外感を感じる義母などに孤独を感じます。その矢先、赤ちゃんなんてできたものだから、ますます母親としての責任感、いい母親になれるのだろうかという不安に押しつぶされる毎日。

そんなストレスから、食べ物以外の異物を飲み込む異食症を発症。ますます夫や義母から理解されなくなり遂には施設に入らされるようになるという始末。(人を厄介扱いするということに腹が立ちますね)

ハンターはそんな生活の中で、私だって色んなことができるんだよ、あなたたちが驚くようなことができるの、挑戦できるの、見ててって自分を知って欲しかったんだと思います。だから異食症を発症し、自分に目を向けて欲しかった→これはハンターは無意識です、身体がそう求めているのだと思います。
そして、異物を飲み込むことで私は人と違ったことができると自信が湧いてくるのかもしれません。

このモラハラ気質な感じやこの孤独な生活に耐える、夫との生活を維持していくため、義母からの嫌味な話にも耐える、無条件で受け入れる、異物を飲み込む時の不快感、痛みに耐える(その後には快楽が訪れる)、そんな意味も含まれてるんだろうと思います。

また、ハンターにとっては、自分の存在そのものが耐えることだったのかもしれません。
物語の中盤の方で明かされますが、ハンターの母親は過去にレイプされたことがあり、そこでできた子供がハンターだったとのこと。

この窮屈な結婚生活を抜け出すため、母親に助けを求めて電話をかけるシーンがありますが、母親があなたを迎える部屋はないと伝えます。
母親からレイプして生まれた恥ずかしい子供として、日頃から思われていたのかもしれません。まぁ確かに、子供を見てると嫌でも相手のことを思い出すでしょうし、レイプされた経験がある自分が情けなくて恥ずかしいと思ってしまうのは必然なのかもしれません。。(じゃあ産まなきゃいいじゃんというのはまた別の問題です。。)

そのことをハンターは分かっていて、自分は周りから隠されたい恥ずかしい人間なんだと認識して生きてきたのだと思います。(最後にはレイプ相手の家に行き、自分は恥ずかしくない人間だと認めてもらい、正気に戻るという衝撃シーンがあります。レイプ相手を頼るくらい、誰も気にかけてくれる人がいなかったのでしょう。)

夫はその事実を知り、ますます妻を『ハンター』ではなく、赤ちゃんを産んでくれる人として見るようになってしまったような気がします。。→ハンターに大丈夫だと声かけて欲しかったな…

最後は、吹っ切れたような形で病院に行って薬をもらい、ショッピングセンターのトイレから出るというシーンで終わっています。きっと一人で病気と向き合いながら生きていくということなのだと思いますが、そのハンターの強さに尊敬しました。