イトウモ

ピーター・パン&ウェンディのイトウモのレビュー・感想・評価

3.6
ピーターが崖から落下して海賊船の帆を切り裂くシーンが一番泣ける。

これでもかと、ドローン長回しの浮遊感が見せびらかされているが、まったくこれがだしにされて浮遊よりも落下で見せ場をつくることにセオリー通りの映画美学を感じた。優等生っぽい

ロウリーの映画はいつも「帰還」の話である。
ディズニーだからクライアントワークっぽいのだろうと訝っていたところ、もちろんそれゆえっぽい話のぬるいダイジェスト感はありつつそれでもロウリーの映画らしくもある。

帰還について
ウェンディがロンドンに帰る話にするのかと思ったら、ピーターがジェームズ・フックのもとに帰る話だったので驚く。フックの幼児性を出すのに、童顔俳優としてジュード・ロウの美形をむしろ未成熟な醜さとして撮ったことは翠眼と思った。
ビッグベンと懐中時計とチクタクワニ。大人にならない子どもたちを描くのに時計をモチーフにするのは少しわかりやすすぎるが、
そこで浮遊を子どもに、落下を大人に担わせるのは泣ける。飛行能力を奪われたピーターが、自ら落下を選ぶ例の帆を切り裂くシーンで泣きそうになるのは、ああこうして大人になるのかと思わせるからだ。
どう大人になるのか。あの冒頭の、ダーリング家の古びた肖像写真が思い出される。併せてスピルバーグの『フック』を見返したくなった

怪獣映画としてのワニの動き、生々しさ
ビッグベンをくぐるときの子供たちの停止画もよかった。とてもぜいたくだった。