イトウモ

オッペンハイマーのイトウモのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
1.3
「オッペンハイマー」とは誰なのか。
一見複雑そうだが、シンプルにそういう演出・作劇に感じられた。
ハーバードの物理学徒だった青年が、政府の一大事業となった原爆の開発に従事し、ロスアラモスの荒野に建設された人工集落の長となり、戦後はスパイ容疑で裁判もどきの尋問を受ける。一代記で、科学史で、政治劇。メロドラマで、SFで、スパイ映画。題材選びは本当に素晴らしい。原作には強い興味を持った。

それで、ノーランの映画は基本的に、映画とは名ばかりのプレゼン資料なのだが、もうこうなってしまっては、人が喋っているのをクローズアップで撮っているだけではないのか、有名な俳優をキャスティングして、次に誰の「顔」が出てくるか、くらいしか演出がないのではないかと思わされた。こんなことをしたいのなら、なぜ映画なんか撮り続けるのだろう。これは企画会議ではないのか。

出演シーンの半分くらいが裸なのはどうかと思うが、フローレンス・ピューはとても良かった。彼女の人生の話であれば、別の監督で見てみたいと思うほど。

ノーランのファンではないが、世代的に新作をほぼリアルタイムで見てきた監督だ。その中でもワースト級につまらなかった。

これがアカデミー賞か……とはあまり思わない。いかにも愛国的な内容で。ノーランがアカデミー賞はちょっと驚きだけれど、『パラサイト』以降の最近の流れだと、一番穏当なアメリカ人ローカルらしい選出ではないだろうか。