Ren

ピーター・パン&ウェンディのRenのレビュー・感想・評価

1.5
映画の歴史上、こういう実写化はダサいからやめようと批判されてきたんじゃなかったっけ?と率直に感じてしまった。携わった人が誰も得してない気がする。この感覚は自分がアニメ版『ピーター・パン』で育ったから、という理由だけでは絶対にない。駄目。

飛んでる風の映像。戦ってる風のアクション。そこには何をやっているのかという要素しか映っておらず、徹頭徹尾軽くてぎこちなくてノれなかった。冗長だと思ったら次には説明不足のまま突っ走る謎脚本、数えきれない試行錯誤を強いられただろう明らかに足りてない予算、演技プラン(ピーター・パン役のアレクサンダー・モロニー、華々しい主役デビューなのだからもっと映えるように撮ってあげて!)、全部合ってない。やろうとしていることを汲んでいるうちに没入できず時間だけが過ぎていく。

というかあの人たち、何かやってた?捕まって逃げて喋って捕まってただけだけど。アニメ版もそこは大概だけど、70年前のアニメーションと2023年の実写(どうしてもアニメよりぱっと見のカットは地味になる)を同じとしないでほしい。

ネバーランドはロケでいける、という見立ては合ってた。今作のネバーランドはあまりに現実。あまりにただの孤島。ほぼイニシェリン島(やってることも似ている。ピーターとフックの内戦)。殆どの観客の「何ここ?」という疑問はウェンディが代弁してくれる。ネバーランドは、もう一つの現実だ。

「母性」「大人になること」というテーマは引き継ぎ。ただし今作ではウェンディによってピーターが変化・成長するというアニメ版からの逆転構造が要になっているのが面白いが、その結論が「友情」に依存しているのがブレてる気がする。色々軸が多いわりに捌けていない。
フックの終盤の某台詞は良かった。大人になってしまった大人の虚無感を今作は彼に託した。

ジュード・ロウの演技だけ褒めている感想もあるけど、そうか?と思う。本音で言っている可能性もあるけど、微妙な作品に一人出演しているビッグネーム俳優をその人のファンだから/その人だけ知っているから、という理由だけで持ち上げるのはしんどい。これは『ピノキオ』のトム・ハンクスにも見られた反応。

総括、後世のための実写化の教科書。最近、「技術通知は成功もだが失敗例のほうが後続の人のための参考になる」と職場で教えてもらったばかりだったのでそんなことを思った。おすすめです!

その他、
○ ウェンディ、自分の名前だけ書くのはどうなん?「ダーリング」じゃダメだったの?タイトル回収のためだけの演出?
○ ピーターとフックがピュンピュンと高速でパンする演出はいいのか?ダサかったけど。

【余談】いくら人それぞれとは言え、今作を「ポリコレ」だからダメ、とする人のズレようには呆然とする。そもそもポリコレをどういう意味で使っているのか説明できない人たちなのだけど、普段から偏った見方をしていると批判も偏ってしまう。ティンカーベルが違う〜人種差別とかではなく〜とかもういいから。そういう人たちの言う「差別でなく原作に忠実であってほしいだけ」はもちろん嘘。
改変するのでなく新しい黒人のキャラクターを作れとも言うけど、勿論現在進行形で続々作られているのでちゃんと調べてからものを言いましょう。批判したいなら調べる、という基本ルール。人種の多様性が今より希薄だった時代のものを今そのままリメイクしても意味が無いので、「こういうのは新作でやって既存の作品に持ち込むな」もやはりズレている。リメイクが作られるとリメイク元がこの世から消えると勘違いする人がまだいる(その多くの人もそれが勘違いであることには気づいているけどつい言ってしまう)。
Ren

Ren