どらどら

護られなかった者たちへのどらどらのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
4.8
- 不埒なものたちがあげる声よりも、もっと大きく、もっと図太く

『さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のフリをして、少しでも得をしようと、そんな国民ばかりいたら日本が滅びる』
と言い放つ人間が総理大臣になりかけ、
「自助•共助•公助」といって憚らない人間が総理大臣になり、
自己責任論が溢れかえるこの国で

震災で、コロナで、様々な事情による生活困窮者が溢れ
先進国の中でもとりわけ高い相対貧困率を抱えながら
「最初で最後のセーフティーネット」でさえ穴だらけで
痛ましい事件が後を経たない

わたしたちに「痛ましい」という資格はあるのだろうか
彼らの声を、聞こうとしたことがあっただろうか
いや、彼らがそもそも、声をあげられる環境が今のこの国にあるのだろうか

「護られなかった」者たちの魂の叫び
この映画はその声を聞こうとする
声をあげようと、呼びかける

私たちは、誰の声を聞くべきか
傍観者でいることは許されない

- 死んでいい人なんて、いないんだ
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中山七里×瀬々敬久×阿部寛×佐藤健×清原果耶
瀬々敬久さん、「菊とギロチン」「友罪」「楽園」に連なる傑作のラインで安心

生活保護制度の陥穽と人間としての尊厳の本質
震災で無惨に奪われた命と人災で刻々と奪われていく命
自己責任論が吹き荒れる現代社会に、この映画は強烈なNOを突きつける。
それは瑛太らのような、傍観者でいることを許すような生ぬるいNOではない
善良な傍観者は加害者以外の何者でもないと強く叫ぶ

正直、ツッコミどころも多く粗も多いし、クサいセリフや情緒不明なセリフも散見される
それでも、この映画を貫く強烈な怒りは、僕の心に突き刺さった
事件の真相が明らかになった時、その怒りに、その切なすぎる真実に、涙が溢れてきた

清原果耶をこのケースワーカー役にキャスティングした時点でこの映画の成功は決定的だったのだろう
これで助演女優賞取ってほしい〜
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