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PIG ピッグのTKEのネタバレレビュー・内容・結末

PIG ピッグ(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ニコラス・ケイジが攫われた豚を取り返すために大暴れするぜ!って言われたらメチャクチャ面白そうに思うじゃないですか?!
全然そんな事はなかったんですが、よい作品でした。豚にここまで泣かされるとは思わなかった…。


ロビン(ニコラス・ケイジ)は深い森の中、トリュフ豚と共に世捨て人のような生活をしつつ、週に一度、訪れるトリュフのバイヤーであるアミールにトリュフを売ることで生計を立てていた。
そんなある日、相棒である豚が何者かにさらわれてしまう。ロビンはアミールと共に豚の行方を追い街へと降り立つ。


…とここまで聞いて、仏像取り返しに来たタイ人とか像を助けに来たインド人みたいな展開を想像してたんですが、全くそんな事はなく、淡々とした人間ドラマでした。


作中盤にロビンは名の知れたシェフだったのだが、妻の死により隠居生活をしていたことが判明する。

一方、アミールは厳格で優秀な父と仲違いをしており、ロビンと出会うことで父に認められるように奮闘している。
そして、かつてロビンの料理を食べた両親が、その日だけは喧嘩をすることもなく笑顔で料理を絶賛していたことが分かり、2人の関係性が深まっていく。

ビジネスパートナーとしての枠を越えていく2人の距離感の縮まり方が丁寧でよいです。

結局、豚が攫われた理由というのは勝手極まりないもので、しかも全然救われない形で終わるのですが、そこに至るまでのドラマがいい…っ!

ロビンの名が裏社会でも知れ渡っていたり、謎の優遇受けたりで、お前何者なんだよ?感はスゴい感じますが、そこで変なバックボーンを説明しだすと途端に胡散臭くなるので、雰囲気だけで凄みを表現する演出は見事でした。


実はトリュフ採取に豚は必要ないのだけれど、じゃあなんでそんなにボロボロになりながら豚を取り返そうとしてるの?と理解できないアミールに「愛だよ」と返すロビン…こんなん泣くわ。

ロビンにとって豚は愛すべき家族だったんですよね。それをアミールが理解し、父親と正面から対峙する展開は胸熱すぎる…っ!


ニコラス・ケイジに泣きそうな顔させたら世界一だと思っているのですが、この作品はその才能が惜しみなく発揮されており、また60歳近いとは思えぬほどの胆力を見せつけてくれるので、ニコラス好きなら大満足間違いなし。

また、冒頭の豚が攫われるシーンの豚の叫び声がマジで「助けて、お父さん!」って言ってるような切なさで感情移入ハンパないです(言い過ぎ)

予告編とかニコラス・ケイジ=アクションとか思ってみると、本当に肩透かしくうと思います。
まったり時間が流れるタイプの映画なので体力ある時に見て下さい!
TKE

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