宣伝ビジュアルとそこにあるキャッチコピーから期待する内容と実際の中身にいささか乖離があり、正直ガッカリ感とモヤモヤが拭えない。
「愛するブタを奪還する、慟哭のリベンジスリラー!」って、それはもう愛犬のリベンジを果たすキアヌ・リーブスのニコラス・ケイジ版を期待するのが人情だと思う。まあ、「慟哭」は間違いではないけれど、どうしても「コレって、一般的に言うスリラーか⁈」と思わざるを得ない。
ーーという先入観を無しに考えると、なかなか不思議な作品だと思う。
世捨て人的に森に住む主人公が愛するブタを拐われ、チャラいトリュフバイヤーを手足に使い愛豚の行方を追って街に出てくる物語。となると、またまたランボー的展開を期待してしまうのだけど、物語はその真逆で終始、静かに淡々と進む。
確かに可愛いブタちゃんの行方を追ってはいるのだけど、謎多い主人公は言うまでもなく、バディ感が高まる若者の生い立ちから父親へのコンプレックスまで次第に観る者の関心が高まっていく。
この若者を演じる俳優アレックス・ウルフには見覚えがあった。「オールド」にも出ていたが、私の記憶は「ヘレディタリー/継承」で散々な目に遭うお兄ちゃん。数年でだいぶ大人っぽくなっていた。
本作でも最初のうちは気が付かずモブ役だと思っていたが、次第に存在感が大きくなっていき、ニコラス・ケイジのメインストーリーに良き魅力を加えている。個人的には、この青年がこの事件で少し成長した様の方により魅力を感じた。
全体的にはインディーズなアートっぽさがあって、変な先入観さえなければ悪くなかったと思う。