このレビューはネタバレを含みます
10数年かけて追い続けたドキュメンタリーとしては良質だったけど、この「シントイア・ブラウン事件」の顛末には色々と疑問に残ることが多い。
彼女が被害者を後ろからショットガンで撃ち殺し、強盗を働いたのは事実。それが正当防衛だったのかどうかは、彼女の証言だけで裏付けることは不可能だ。また、そうした犯行を「胎児性アルコール症候群」によるものとしていたのも(シントイアの母親が、彼女を妊娠している時に飲酒していた)、結局のところ医学的に因果関係を証明するまでは至っておらず、あくまでも状況証拠なので減刑の材料としてはあまりにも弱い。
今回のケースは、たまたま知事の任期終了間近だったのと、ここ数年の「MeToo運動」による世論の追い風(セレブによる支持表明)が、タイミングよく重なり恩赦になったというだけのことであって、これを「性的虐待をされている人は世の中の犠牲者で、彼らによる犯罪も軽減されるべき」みたいな切り取り方(および受け取られ方)にされてしまうのはとても危険だなと思った。
最後、出所した彼女の姿で作品が終わるのも、何故だかゾッとしてしまった。いろんなことを考えさせてくれた、という意味でこのスコアです。
にしてもNetflixの字幕、日本語の酷さはどうにかならんものか。『Tiger King』の時もヘトヘトになったけど、今日観た『シントイア・ブラウン 裁きと赦し』も大概やった。