建野友保

カポネの建野友保のレビュー・感想・評価

カポネ(2020年製作の映画)
4.2
脚本・監督とも同一人物なので、まだ30代の監督ながら、相当な思い入れがある作品なのでしょう。僕は、在宅認知症高齢者の介護にまつわる家族の悲嘆、周囲の思惑、そして何よりも本人の苦悩を、「アル・カポネの知られざる晩年」という題材を借りて描いた異色の作品と受け止めました(晩年といっても彼の場合は40代半ばですが)。
ギャング界のダークヒーローのアウトローな生き方を活写した部分は少なく、物語の起承転結も乏しいので、鑑賞者を選ぶ映画だろうとは思いますが、トム・ハーディの快演が光る怪作として楽しむのも良いと思います。
巨万の富を築き、多くの人から恨みを買った人物。その末路は、華々しく暗躍した現役時代とは対照的に哀れではありますが、高齢者家族を抱える人たち、認知症介護の現実を知る人たちにとっては多くの共感が得られ、救われる部分も多いのではないかと感じました。
あのラスト、ぼかし方が絶妙です。カポネ自身の幻視とも思えるし、実話とも思える。鑑賞者の想像力が喚起される余白の多さも魅力。一般のレビュー点数、評論家先生の評価ともに芳しくはありませんが、僕はお薦めです。音楽もとても良かった。
建野友保

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