りっく

セラとチーム・スペードのりっくのレビュー・感想・評価

セラとチーム・スペード(2019年製作の映画)
3.5
例えばかつての青春学園ものだと、ヒエラルキーがあって、容姿や肌の色や学力によってグループ分けされており、支配と従属といった関係性から軋みや歪みが生じていき、という作品が多かった。

だが、チームスペード含め、本作の学校内組織は横並びのような印象だ。あるいは、ヒエラルキーの最上位のみ切り取った世界なのか。一応各チームの幹部が集い、学生だけの秩序を守り続けるために話し合いも行われるし、台帳も取り交わしている。そして、互いに密告はしないという鉄則も定められている。

そんな中で主人公のセラは気が休まることがない。仲間や友達として人と付き合えず、自分の敵か味方かでしか相手をカテゴライズできない。親からの進学のプレッシャーもある。そのうえで、秩序を保つために自分に変わる新たな後継者探しという課題もある。

ヒエラルキーを崩し、民主主義のような形で自治をすることで学校という体制からある程度の自治を担保しようとしても、人間と人間の間でまた新たな疑念や軋轢やいがみ合いが生じる。

自由を求めているからこそ、逆に不自由になり疲弊し苦悩するセラに、新入りのパロマはカメラを向ける。この世界に無邪気に客観性を持ち込むことで秩序が崩壊してしまうこと。それはセラの意味での青春を無価値にする危険なものであると同時に、セラの新たな青春を創造する可能性のあるものだ。その予感と余韻を漂わせる、一風変わった学園ものだ。
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