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ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのISHIPのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、ギリシャ神話?の元々人間は手足が4本ずつあって…のくだり。ヘドウィグを思い出す。ヘドウィグ同様、主人公はレズビアン…と言いきっていいのかは分からないが、とにかく同性に恋心を抱くチャイニーズ系の女の子。彼女は人種でもマイノリティで、更にはどうやら彼女たちが暮らす地域はめちゃ田舎らしく、黒人はおろか、アジア人も彼女家族だけのようだ。クラスの人気者は顔だけはいいお調子者みたいな感じ。父親は英語が苦手故に仕事も上手くいってない?ようだ。田舎に住み、そしてマイノリティであることを痛いほどに自覚するエリーは都会?の大学への進学すら半ば諦めている。田舎に対する風刺がきいている。
劇中での三角関係の中で、エリー、アスターは文芸や美術、映画のようなアートで心の繋がりを感じる。ついこないだ「花束みたいな恋をした」を観たばかりだけど、周りに同様の趣味をもつ人などいなく孤独を感じることが多かったと思われる2人にとって、心の繋がり、ひいては自分を肯定されたほどに感じたことと思う。
それはアスターにとってみたら、運命の片割れを得たような感覚だったのかな。
そういえば信じ難いことに、田舎すぎて?なのかなんか人気者のやつに求婚されてる事が途中でわかり、しかも結婚した方いいんかな、みたいになってて。え?みたいな。有り得んの現代にそんなこと。と思ったわけなんだけど。エリーの抱く感情との対比的な人物なのかしら。なんかエリーの家来てたじゃん。親父に水かけられてたけど。あれなんだったんだ?笑
この映画の山場(山場ってこの映画のいいワードのひとつねbest part.)である教会のシーン。
愛は寛大でも親切でも謙虚でもない。愛は厄介。おぞましくて利己的。それに大胆。
真理だよなあ。高校生だよエリー。キリスト教のことは詳しくないけど、その愛の語り口はあまりに狭い世界の話だし(男女ふたりが元は一対の人間で…という神話はあまりに残酷だ)、そんな寛大で親切で謙虚でい続けられるほど簡単なもんじゃない。でも彼らは偽りについて懺悔した。なんと素晴らしいことだろう。神がいるならば彼らは赦された。
結局、誰の恋も叶うことなく映画は終焉を迎える。でもポールはタコス屋?、アスターは美大?、エリーは街の大学、それぞれの夢に向かっていった。エリーは最後、別れ際走って追いかけられることの気持ちを知った。彼女の未来はどうなるかねえ。
いわゆる青春映画のドライブ感とはまた違った空気感のある映画だった。ハーフオブイットを面白いのはこれから、と訳すのは面白いな、と思った。つまり…あの田舎町は、小さな世界そのもので、もっと世界は大きく広い、そういう事なのかな。でもかけがえのない時間過ごしたよ、っていう。
結構良かった。
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