MasaichiYaguchi

リスタートはただいまのあとでのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
ココミさんの同名コミックを古川雄輝さんと竜星涼さんのダブル主演で実写映画化学した本作を観ていると、映画のロケ地と縁の深い明治の文豪・島崎藤村の言葉「血につながるふるさと 心につながるふるさと 言葉につながるふるさと」を思い出す。
勇躍、東京に出てサラリーマン生活をしたものの、上司から「何もない」人間扱いされて会社を辞めて10年振りに帰郷した孤塚光臣は、近所で農園を営む熊井のじいちゃんの養子・大和と出会う。
この出会いが都会で尾羽打ち枯らし、人生の迷子になった光臣を変えていく。
長野県の果物というと飯田市を代表するリンゴを真っ先に思い浮かべてしまうが、本作ではミカンとイチゴが印象的に登場し、光臣と大和を結び付ける重要な役割を果たす。
都会とは違って山に囲まれ、長閑な田園風景を舞台にした物語は、観ていて自然とがさついた心が癒されていく。
原作はBLコミックだが映画では際どい描写もなく、徐々に心の距離を縮めていく光臣と大和を共感を持って観ていられる。
特に竜星涼さん演じる大和の人懐っこさ、純粋さ、そして優しさがスーっと心に気持ち良く伝わってくる。
だから光臣でなくても、人として、友として、大和に惹かれる心情が理解出来る。
そうな悩みの少なそうな大和だが、ストーリーが進むにつれ、彼の過去、そして抱えている“重荷”が分かってくる。
故郷で心許せる人との出会いを通し、自分や家族、そして気し方行く末を見付け、リスタートをする若者たちを描く本作は、忙しい中でも一旦立ち止まって自らを見詰め直す大切さを教えてくれているような気がする。