燦

ジオラマボーイ・パノラマガールの燦のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

「社会がどうであろうと好きな女の子さえいればいい」とわたしとあなたが中心の世界に没入していくかのようなシャローフォーカスと、それでも存在感を発揮する、世の中の混乱を捉えたテレビのニュース。東京の街を闊歩する少年・少女の躍動感と、少女が訴える存在の実感の希薄さ。若さを謳歌する少女と、かつての自分を語る母。踊るように生きる少年・少女の姿に気分が高揚するような、それでいて無視できない微かな虚しさが描かれていて、どこか心が痛むような。
総じて楽しくてパワフルなのだけど、どこかに虚しさを抱える少女たちは、岡崎京子さんの漫画から出てきたかのようだった。
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身支度を整えて街に出ていく少年・少女を「東京恋愛専科」に合わせて映し出されたら、もうわくわくが止まらない
小沢健二さんほどの幸せが溢れるラブソングもあまり聴かない気がするし、襲撃するはずの「パン屋」も消えてしまったのが2020年の東京なのだろう(オリンピックのために不可逆に開発されていく街を映像として残しておくためだろうか、「ホットギミック」「朝が来る」など東京の湾岸地域が舞台の作品が最近多い気がする)。
それでも小沢健二の曲を聴きながら、自分なりのよそ行きの服を着て、街に繰り出したい。若さと少しの虚しさを纏って刹那を生きる、「東京の女の子」として。
燦