せっ

TITANE/チタンのせっのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.6
やんべぇ。

幼い頃の交通事故で頭にチタンを埋め込んだアクレシアは車へ愛情を感じるようになり、ついには殺人を犯し、失踪事件で行方不明とされている少年になりすまし、その父親と奇妙な共同生活を送る話。

車の魅力に取りつかれた人達を描いた『クラッシュ』や遊園地の遊具に愛情を描く女性を描いた『恋する遊園地』(これもフランス映画)、過去に似たような作品はあるけど、今作が1番機械に恋するとはどういうことか分かりやすかった気がする。

アクレシアの車への欲望ってマッチョ的なものへの憧れと似ていて、多少雑に扱っても壊れない・逃げないかつ、大きな包容力(?)と心地の良い重低音。最後のふたつがマッチョかは置いておいて、これって逃亡先に出会うヴィンセントぴったり。

前半でアクレシアの近くにいる人達は女性や男性でも弱かったりスキありまくりの普通の人達。でもヴィンセントは消防士でムキムキ、過剰なマッチョイズムを持つアクレシアにとっての初めての生き物としての大きな壁。でもそれこそアクレシアが求めてたもので、"先のとがったものを指してもピンピンしてる"完璧な物体だったんじゃないかな。

一方でヴィンセントも息子への少し奇妙な愛情を持っていて、それが上手く女性だけど男性のふりをしているアレクシアとマッチ。お互い本当は噛み合ってないのに、自分が求めるものを勝手に相手に投影して奇妙な絆で結ばれる。そしてたまに「そういうのは好きじゃない!」みたいなのが垣間見えた時の、微妙なガッカリ感がちょっと面白い。

物に愛情を持つってまさにこういうことなんだろうな。自分の嗜好にあった見方をすると、物だからいつでもそれに応えてくれる。全然理解できる感情だなって思った。だって冒頭の車の重低音が心地良いと感じた人はきっと少なくはないでしょう。
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