映画を評価する際に、ストーリーの出来や映像の美しさは大切な要素です。しかし映画館体験という全く別の次元の話があります。本作はまさに計り知れない映画体験をした作品でした。
これはバイオレンスなのかラブロマンスなのかといった話とは別に、見ている観客が目の前のキャラクターを残虐に殺してほしいのに生かしてほしい、気持ち悪いものを見たいのに見たくないといった不思議な揺れ動きが連続します。自分は何を見ているのか、これをどう語っていいのかを探しているうちに次の場面へと展開していきます。感情のジェットコースターというと陳腐ですが、まさにそんな感じの作品です。
チタンが火によって溶解していき、無機質な感情が愛に変わると書いてしまうとつまらない感じがしますね。その通りなのですが、そういって達観した見方を許してくれる作品ではありません。分析するために見るという第三者的感覚を取っ払い、目の前を見ろと強烈に訴えかけてくるような作品です。良い体験をしました。
ちなみにヒロインの演技はかなり素晴らしいものがありました。